村上龍氏の決断に出版社は戦々恐々だそうだが、なぜすぐ印税の税率にばかり話がいくのか...

2010/07/18

なぜすぐ印税の税率にばかり話がいくのか...

だが、新しい作品を電子書籍のみで、まず販売するという村上氏の計画は、基本的に出版サイクルから既存の出版社を完全に外 すことになる。村上氏がこれまで発表した作品は、角川書店などの大手出版社から発売されている。『歌うクジラ』を連載していた講談社は、ハードカバーの出 版を村上氏側と協議中としているが、詳細は未定のようだ。

出版社による仲介が不要になれば、理論上、作家はこれまでよりもずっと多くの印 税を手にすることになる。日本経済新聞によると、村上氏は、当初の販売目標を、電子書籍の開発コストが回収できる5000ダウンロードとしており、アップ ルが販売を承認すれば、収入の30%を手数料としてアップルに支払い、残りを村上氏、坂本氏、ソフトウエア会社で分配することになる。

確かに、モノを生み出す側と、それを売り出す側がこれまで交わしてきた契約だと、作り手の待遇改善においては出版社、レコード会社が作成したどれだけ配分を作家側に振り向けるか...という構図になっているものがほとんど、

ただ、こうやって活動している人たちって反体制的というか、やはり個人の力を信じて活動している訳なので、企業の論理を押しつけられるのは大嫌いな筈で、

出版社を介さない電子出版流通においては、確かにこれまでよりもずっと多くの印税を手にする事が出来るのは確かに事実ですが、その前に作家・アーティスト・クリエーターにとっては、先日リンゴ・スターがインタビューで語っていた

インターネットのような技術のおかげで、ミュージシャンが「レコード会社に頭が上がらない」状況は避けられるようになったと指摘する。

↑この言葉の作家版として、

電子出版のような技術のおかげで、作家が「出版社に頭が上がらない」状況は避けられるようになった

↑こっちがやはり先な気がするのです。

単純な話として、これまでの積み上げとして、お付き合いしたい(自分を認めてくれる)編集者なりディレクターがいて、自身がイメージするところに近い創作活動が出来ているか...という話がやはり本質問題として前提にあると自分は思いたい...(苦笑)

冒頭紹介した記事に5000部が費用回収の目処という記載がありましたけど、これはわたしが主に音楽方面で活動していた時期の新人アーティストの初期プレス枚数に近いものがあり、とっても馴染むところがあります。

もしかして出版業界でもこの@1500円x5000という数字が(Appleの取り分も含め)電子出版における損益分岐点としてひとつの指標となる のなら、出版社の側にとってもやるべき仕事がかなり明確になってくるでしょうし、出版社を通さずにセルフプロデュースで行こうという作家さんにとっても、 クリアすべき数字と、自分の読者獲得の具体的な数字としてこの5000というのは覚えておいて損はないのかもしれません。

追記:初回はこうやって各種メディアでも取り上げられ、記事を書くために購入しているケースも多々あるでしょうから初回の5000DL突破は村上氏 のビックネームを持ってすれば何ら難しい事ではないでしょう。ただ2冊目からが大事で、そういう意味では初回から音楽に教授を起用したのはもったいなかっ たかもしれません...

O'Reillyの電子書籍流通への取り組みが色々参考になる件

2010/07/17

櫻吉さんが「オライリー本をiPad(ePub形式)で読む」というエントリをアップされてるのを発見し、自分のブログやら、永井さんの書籍をePub化している自分としては、これはやってみるしかないじゃん!ってことで予定を早めて帰宅して、ごにょごにょと作業して何とかエントリ書けるとこまでたどり着きましたw

わたしの場合ここ最近の興味はどうやってコンテンツホルダーの方々に電子書籍流通を説明・解説しながら、ビジネスとしてのお手伝いできる領域があれ ばそこは仕事としてお手伝いさせていただきたい!というスタンスなので、最初の興味はePubへの変換手法ではあったのですが、O'Reillyのサイト などを見ているうちに、電子書籍流通への取り組みはやはり参考になりました。

日本の出版・印刷関係の方とこの手の話をしているとどうしても組版のところで話が一旦止まってしまうのですが、今日ご紹介する事例には、そのデバイ スによる表示の違いやら、細か不具合について、やはりまずは情報を流通させてしまうという事をO'Reillyは判断したのだろうと推測できるところが多 数あります。

まずO'Reilly Ebooksのラインアップとしては、

  • Mobi
  • APK
  • PDF
  • ePub

このラインナップが、それぞれのデバイス用に準備されています。

発行済みの書籍一覧はこちらで参照可能になっており、eマークをクリックすると各種電子書籍ファイルと紙媒体を含めた購入ページに遷移、 OnlineというカテゴリのSafariというボタンをクリックするとSafari Books OnlineというGoogle Booksにどことなく似ている電子書籍閲覧サイトに接続、一部無料のコンテンツと、全体購入だけでなく、一部購入と閲覧が可能になるような仕組みでサー ビス提供されています。またExamples配下の、圧縮ファイルアイコンは見ての通りで、書籍で使用されている参考ソースがダウンロード可能になってい ます。

それでは、EBookのボタンを押すとどうなるか見てみましょう。わたしの仕事領域ですとO'Reilly本にお世話になるというとこんな分野になります。

う~む、確かにEbook単体で見たときの価格設定は確かにお得感ほぼなし...って感じですが、PDFだけ販売している書籍は$7.99だったり、 Ebook $9.99(Mobi, PDF, ePub)というのもあったりするので、ここは個別フォーマットへの変換コストをそれぞれに加算しているようです。

  • Print $39.99
  • Print+Ebook $43.99
  • Ebook $31.99 (Mobi, PDF, ePub)

単純な金額比較ということであれば、AppStoreで600円で購入すれば2500円近い節約になりますが、技術参考書をこの状態で見て果たして、金額節約できたことだけ喜んでいていいのか?と考えるとちと違う感じしますよね。

iPhoneアプリとしてリリースはされていますが、この画面サイズで1000頁を越える情報を閲覧して活用するのは中々厳しい感じがします。

Itunes01

017

そういう意味でも、櫻吉さんが今回紹介してくれた、AppStoreで購入したO'Reilly本をePub化、はたまたもう一手間をかけて、 mobiファイル作成までの道筋を把握することができたので、さまざまなデバイスに対してどう個別形式の電子書籍ファイルを作ればよいのだろ...と悩んでい た方々にはかなり参考になる情報をもらいました。

残念ながら現時点でKindleでどこまでの再現性あるのかを自分自身では試せていないのですが、まず日本でこの手の提案するときは、やたらと重箱 の隅をつつく傾向あり、普段は中身だ...という話しているのに、こういう時だけ妙にデバイス間の表示の違いや崩れを批判しまくるタイプの人が居たりするの で、案件を実現させるためには、まず今回ご紹介しているO'Reilly本の紙を含む、デバイスによる違い・不具合のレベルを許容し、まずは情報を世界に 流通させることが重要だ!と考える会社さんと仕事するのが大変重要ではないかと思うのでした。

データの購入については何ら問題ないと思うので、その辺の手順は割愛しつつ、エントリで示されている方法を実際に試していくと、無事ePub化ができ「Sigil」のほうでもこのようにファイルを開くこともできます。

Sigil

iTunesのブックに登録して、iPadのライブラリに無事登録完了!

008

ちなみに、iPadとiPhone、600円で購入したiPhoneアプリで同一ページを見た場合を比較してみましょう。

まずiPadで文章とテーブルタグを使用しているページの表示上の変化を見てみます。

016

ページ横幅が狭いiPhoneのiBookでは当然表組みがかなり厳しい状態になってしまいますね

018

アプリ版のほうも当然ながら読み込んでいるソースは同じなので、似たような状態に陥ります。ここでは、このような同一ソースでも

          <thead>

            <tr>

              <th class="sgc-2">IA concept</th>

              <th class="sgc-2">Books</th>

              <th class="sgc-3">Web sites</th>

            </tr>

          </thead>

レンダリング結果の違いがこのくらいあるのね...という点も見ていただくと良いかもしれません。

013

次は、画像表示系を確認してみます。まずiPad版iBooks

006

iPhone版iBooks

014

iPhoneアプリ版

015

画像については、表示サイズに合わせて自動で調整してくれるので問題は起きていません。

それでは最後に、本日紹介したO'Reillyの電子書籍は、iTunesですとアプリのみの販売。なのでiBooksで検索してもこんな結果になる訳ですが、この状態はほとんど多くの出版社も同じ状態、

019

では自社コンテンツを流通させるための準備がこんなWebサービスとして準備されているか?というとこれまた、まだまだ...という会社さんがほどんどかと思います。

Safaribooksonline

冒頭書いたように、これに似たシステムとしてはGoogleBooksが考えられ、これを利用するならシステム投資のコストは必要ありませんから参入障壁はかなり低くなりますね。

Googlebooks

ただ、GoogleBooks最終的にはePubなんだけど、書籍データを著者が送る際には確かPDF形式か実際の本を送るというような段取りだっ たと思うので、Amazon Google Appleの3つでコンテンツ流通させる場合のアセット管理については、今後様々な方法や効率的な手法が示されてくると思いますが現在は個々に頭を悩ませ るしかない時期なんでしょうね(苦笑)

今日知ったことを整理していくと、多分レイアウトへのこだわりという点で課題は残りつつも、横書きテキストのコンテンツであれば、かなりやれる事が あるような気がしていて、それを試すにはやっぱInDesign CS5から一括変換できる制作手法で立ち回るのが一番効率良いのかな~とこれから思案しつつ、書かなくてはいけない電子書籍関係の企画書の筆が進まず困っ ていたのですが、このエントリを書いたことで何とか形に出来そうですw

参考にさせていただいたブログ記事

平凡でもフルーツでもなく...のePub関連記事

佐々木 康彦 Twitterアカウントはこちら。 http://twitter.com/yasusasaki
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